鉛筆画のおはなし

 小さい頃から絵を描くのが好きだった。3歳の頃に描いたハートとカニの絵はいまだに「あれはうまかった、大人の私たち(親族)より上手かった」と言われる。自分の記憶としても、幼稚園の頃からとにかくたくさん絵を描いていたように思う。上手いと褒められるから好きだったのかもしれないけど、これが私の絵描きの原点。

 小学校低学年の頃に描いていた絵はわんぱくで、女の子が描かないような恐竜なんかをよく自由帳に描いていた。もちろん女の子の絵なんかもよく描いていたのだけど、記憶として強いのは恐竜だ。他の女の子とは違うところを見せたかったのかもしれない、と今となっては思う。
 小学校高学年あたりから絵が得意な友達と漫画を書くようになっていた。アニメも大して見ないし漫画もほとんど読まないのに、友達の見様見真似でアニメや漫画みたいな絵を描いていた。その頃には、自分で考えたキャラクターなんかが何人もいて、そのうちひとりでノートに漫画を描くようになっていた。今思えば全く面白みのない漫画なのだけど、友達からは描くたびに「見せて見せて」と喜んでもらえて嬉しかったのを覚えている。

 中学生になって友達の幅も増え、ついにはアニオタで絵のめちゃくちゃ上手い友達と接するようになる(この子が後に仲のいい、私のことをよく分かってくれる大切な友人になる)。アニメのことはよくわからない私だけど、彼女の描く絵がとにかく大好きで、よく誕生日なんかに彼女の絵をねだった。アニメや漫画の推しを自分の手で表現する彼女を見ていつしか私も推しを表現したい!と思うようになった。でも私は彼女みたいにイラストが上手じゃないし、というか3次元だし、みたいな感じでなかなか表現方法が自分の中で見つからなかった。でもどうしても私の手で推しを生み出したい(?)…と考えていて、ふと「写真を見て真似したらいいんじゃない?」と思った。だって3次元なんだもん。真似して立体的に描いたらいいじゃん?なんてなんとも適当な考えで私は「鉛筆画」にたどり着く。といっても道具を揃えるとか、そんな考えは一切なく、中三になってはじめた鉛筆画はシャーペンと消しゴムのみだった。今思えば全然似てないし立体的でもないし、なんでこんなのを続けようと思ったのか不思議でならないが、多分「推しを絵で表現する」という初めての感覚が気持ち良かったのではないかな、と思う。ずっと憧れてたこの感情を手放したくなかったのかもしれない。

 高校生になり、LDH好きな友達や絵の好きな友達と一緒につるんでいたのだけど、鉛筆画はそんなにやらなかった。テスト期間中学校に残って、勉強もせずに軽く鉛筆で模写してたぐらいで(勉強しろ)、そんなにのめり込みはしなかった。なんでだかはよくわからない…。
 高校2年生になって、登坂さんがソロをやり始めたぐらいの時にまた「この人を描きたい!」と思った。登坂さんのソロは念願だったので描きたい気持ちが強かったのかもしれない。高校2年生になって初めて描いた絵はDIAMOND SUNSETのMVにある横顔のシーンだ。それがこの写真なのだが、まあ似てない。
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何をもってこれをよしとしたのか全く自分でもわからないのだが、一つの要因として「めんどくさがり」なことが挙げられる。私はもっぱら絵描きには相応しくない極度のめんどくさがり屋なのだ。この頃はもう下描きもほぼせずに目描いて〜この辺りに眉があって〜みたいな感じだった。(ちなみにこの描き方は大一の上半期ぐらいまで続く)
 下描きすること自体がめんどくさい、私は立体的にしていくのが好きなんだ!ととにかく適当に描いていた。髪の毛もめんどくさいのでTHE・鉛筆、みたいな仕上がりになっている。本当下手くそで怖い。

 そんな私がきちんと下描きを始めたのは、インスタグラムで見つけた登坂さんの絵師だった。その人も鉛筆で登坂さんのFAを描いていたのだが、まあとにかく上手い。どこまでもリアルで、もう写真なんじゃないかってぐらい上手い。今の私の絵も写真みたい、と言ってもらえるし、そこが目指している場所なので本当にめちゃくちゃ嬉しいんだけど(もっと言って)、あの方には勝てない、といつも思う。
 そして登坂さんの絵師はこの方だけではない。なんなら三代目世代のファンの方々は、結構鉛筆画をやられてる方が多い。そんでもってみんな上手い。鉛筆画なんて白黒で写真みて描いてんだからみんな一緒でしょ、なんて思うかもしれないけど、これが結構絵柄が出るのだ。同じ写真で描いていて、みんなどれも本当にそっくりなんだけど一つ一つ描き方の癖が違う。それが面白い。これもある意味沼の一つかな。

 この人に出会って、私はもっと丁寧に描かなきゃ、と思うようになった。でも寸法を図って、マス目を描いて、マス目の通りに模写する、っていう方法はやっぱり私の性格からして無理だった。そんなことをしてたら発狂してしまう。なので私はとりあえず下描きを丁寧にやることにした。最初はもう似てるかすらわからないので、アプリで元の写真に下描きを乗せてどこが合わないのかを確認して合わせるようにしていた。でも結局下描きの写真の撮り方なんかで場所も変わってしまうのであまり上手くいかなかった。結局は何日もかけて下描きを見直すのが一番似る、と思う。最初は上手くいったつもりでも、あれ?あんまり似てないかも?と数日後には思ってしまう。それを減らすために出来るだけ何日か見直すようにした。おそらくこれがその辺りの時だ。
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 当時は本当にめっちゃ上手くなったやん!?と思った。今までより似てるし、時間かけたし。けどだんだんその気持ちは薄れてきてしまい、結局は鉛筆画向いてないんだよなーなんて思ってしまうのだ。これは今でも思う。本当に鉛筆画向いてない。けど楽しいんだよね、これ。

 上手くなりたい、と思った私はインスタグラムで鉛筆画を描く方の投稿をよく見るようになった。あ、そんな描き方するんだ!?とかぼかしに綿棒使うのか!?と表現方法をどんどん見つけた。絵をわざわざ習いに行くのは出不精のわたしにはめんどくさいけど、今の世の中ネットに自分の絵のタイムラプスだとかあげてくださる方が多くいるので本当にありがたい。勉強させていただいてます。ありがとうございます。
 ちなみにその成果が一番出たのはこの絵。
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というかこの絵のデニム生地だ。これは初見の方にも褒めてもらうことが多くて嬉しかった。
 この表現ができたのはインスタグラムでデニム生地を描いている動画を見つけたからだ。別にデニム描くから探そうと思って探したのではなく、本当にたまたまその動画が流れてきて、布を描くのが好きな私はへえそうやって描くのね、なんて眺めていただけ、という偶然なのだ。それとももしかして運命だったのかな…。とにかくありがとう。ちなみにマジでデニム面倒だった。できればもう2度と描きたくない。推しが着るのであれば…頑張るけど…

 本格的に鉛筆画を始めて4年経ったけど、今だに写真のような絵を描けたとは思ったことがない。いや本当によくやったと思うよ自分??すごいと思うよ???似てるしね?上手いしね?すごいんじゃない?とは思うし、フォロワーさんにたくさん褒めてもらうので(いつもありがとうございます)、充分幸せなんだけど、わたしは結局「写真と瓜二つの絵が描きたい」。似てるかもしれないけど瓜二つの絵はない。鉛筆画って良くも悪くも白黒の世界で、毛、目、肌、唇、金属、布、柄、とにかく全てを描き分けなきゃいけない。ある意味で色で誤魔化せないそこそこシビアな世界だと思う。(もちろん色を使って表現することが悪いことだとも思わないし、むしろ羨ましいです。やっぱりカラフルに綺麗に推しを描きたい。技術と新しいものを開拓する勇気があるのなら…)そんでもって写真を模写するんだから、正確であればあるほどいい。と思う。そんなわけで私は今だに自分の絵に満足できない。
 満足できないと言いつつ、なんだかんだ自分の絵は大好きだ。Jr.EXILE世代を推す方で鉛筆画をやられてる方はあんまり見かけない。涼太くん描いてる人がいるなあ、くらい(この方もめっちゃ上手い)。なのでなんとなくこれは唯一無二の特技かもしれない、と思っている。私の絵をきっかけに、こんなふうな表現の仕方もあるのか、と思ってもらえたらいいし、鉛筆画の良さを知ってもらえたらもっといいな、ということでこれからも描き続けるので、これを読んでいるのがフォロワー様ならこれからも褒めてください。